torikumo

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torikumo=季語の「鳥雲に入る」を由来。
春に北方に帰る渡鳥が雲間はるかに見えなくなることーー。

故郷・東北を写した『いくつもの音のない川』、場所を特定せず雪の景色を収めた『winter』と、
藤田はるかは対象に目を凝らし、対象と自身の距離感を確かめながら、写真というメディアに定着させてきた写真家です。
本作は、襖絵や屏風に描かれてきた花鳥風月を、自身の写真で表現した意欲作です。
画材屋で譲り受けた金箔と銀箔貼りの襖を撮影、それをプリントした印画紙を下地として、
花や木、鳥などの厳しくも美しい自然や動物といった被写体を古い4×5 のフィルムで撮影し、
その印画紙に重ねてプリントするという手法で制作されました。
暗室での手焼き作業により、濃淡のテクスチャーなど、偶然やその場の発見を取り込みながら一点一点、作品は生み出されました。
その作品は襖絵に特徴的な余白(間)を生かした構図に、暗色を基本としながら何層もの色調が重なる様は、
はるか長い時間を経て存在する絵画作品のようでもあります。
蛇腹状にページが続いてゆく造本も相まって、絵巻物のような写真集となりました。